奪われた少女
 
 
「・・・・・う、う〜ん・・・あれ、ここは・・・?」
 
自分の見知らぬ部屋で彼女、丹羽和美は眼を覚ました。
目覚めたその部屋の中で彼女は、
分娩台のようなものに両手、両足を縛りつけられ監禁されていた。
 
「やっと起きたか、待ちくたびれたよ」
「み、美鈴さん・・・こ、これっていったい・・・」
 
彼女の目覚めを待っていた少女の名は山本美麗。
校内一の有名人であり、和美のクラスメイトでもある。
 
「ど、どうしてこんなことを・・・?」
「どうして? はっ、分かってんだろ?
 お前みたいな女が何で私こうして呼び出されたのかってことくらい」
「や、やっぱりあのことを? でもあれは・・・」
「黙れ! 言い訳なんか聞きたくないんだよ!」
 
和美が反論しようとするが一蹴されてしまう。
和美が美麗に対し必要以上に怯えるのは監禁されていることだけが原因ではない。
山本美麗という存在自体への恐怖が大きかったからだ。
 
山本美麗は暴力団組長の一人娘であり、その権力は警察、病院、
そして彼女達の通う学校や教育委員会等、彼女達の住む地域の様々なものにおよんでいた。
彼女に逆らうことは強大な権力を持つ暴力団そのものへの反発を意味し、
一度目を付けられた最後、この町で暮らしていることはできなくなる。
 
そのため、学校では彼女に逆らうものは教師を含めて誰もおらず、
彼女につき従う者も多いが、和美のように目を付けられない様に
極力彼女に近づかないように注意している生徒も大勢いた。
だが、自分とは関係のないところから、和美は美麗に目を付けられてしまった。
 
「あれは、彼が私に一方的に近づいてきただけで、私は何もしていません」
 
和美は昨日、生まれて初めて告白された。
しかし、その相手はこともあろうに美麗の彼氏だったのだ。
この出来事が、美麗の逆鱗に触れてしまった。
「自分からあの男を寝取ろうとしたわけじゃない、だから許してくれとでも?」
「そ、それは・・・、お、お願いです。私は貴女の彼氏に手を出したりしません。
 だから・・・。」
「勘違いするな。別にお前が手を出したなんて思ってないし、
 あんな男のことももうどうでもいいんだよ」
「じゃ、じゃあどうして・・・」
「私が許せないのは私と付き合っている男が他の女に興味を持った上に、告白までしたってことだ。
 それはつまり、お前の方が私より女として勝ってるって言われてるようなもんじゃないか。
 私はそれが許せないんだよ! 私がお前より劣ってると言われてることがね!」
「・・・・・・」

和美自身は何もしていない。それでも運がいいのか悪いのか、
可愛い女として生まれた為に、美麗に目を付けられる結果となってしまった。
「まぁだからと言って、別にお前を殺したりしたいわけじゃない。
 このまま監禁するつもりもないし、ちゃんと後で家にも帰すし、
 学校にもちゃんと今まで通り通ってもらうよ」
「・・・わ、私に何をするつもりなんですか・・・?」
 
命を奪われるわけでも、監禁されて嬲り者にされるわけでもない。
だが、絶対に自分が無事に帰ることはできない。
美麗の様子から、その事実がひしひしと感じられた。
 
「くくっ、なぁに、あんな男に言い寄られるからこんなことになったんだ。
 あんな男に寄ってこられたらお前も迷惑だろ?
 だから、そんなことが二度とないように、まともな男が寄ってこないように
 細工させてもらうだけだよ」
「さ、細工? そ、それに、お、男がよってこないようにって、
 な、何するんですか? ちょ、やっ、いや〜〜〜」
「ほら、暴れるなっ!怪我したくなかったらな」
「・・・・・っ!!」
美麗は中に何が入っているかもわからない注射器を持ち出し、
和美を一喝して大人しくさせると容赦なく中の薬品を投薬した。
「・・・よし、終わった。いい?今日はこれで解放してやるけど、
 明日からも毎日ここに来てもらうからね。
 親に怪しまれないように、適当に対処しておけよ」
こうして、初日の調教は終わった。
初めからハードなことはせず、精神的に屈服させる所から確実に…。
 
 

その日の夜。
「部活?」
「う、うん。明日から始めることにしたから、帰るの少し遅くなると思うの・・・」
「そう、何をするのか知らないけど、頑張ってね」
「う、うん・・・」
言われた通り、何とか誤魔化してはみたものの
内心問い詰めてほしいとも思っていた。
自分が美麗に何をされようとしているのか、全て打ち明けたかった。助けてほしかった。
だが、そうなると家族にまで被害が及ぶのは目に見えている。
結局、自分ひとりで耐えるしかないのだと、
自分に言い聞かせるしかなかった。
 
 
次の日の放課後も、美麗の家へ連れて行かれた。
 ついて早々、また昨日と同じ注射を打たれた。
それが終わると、今日から始まる調教部屋へと案内された。

「な、何なんですかここ?」
案内された部屋にはバーベルやランニングマシン等、
フィットネスジムを思わせるような設備がいろいろと用意されていた。

「なに、ちょっとお前をしごいてやろうと思ってね」
「しごく?」
「まぁクラブにでも入ったと思って頑張るんだね。
 指示はあのスピーカーから伝えるから」
そう言い残し、美麗は部屋を出た。
外から鍵もかけられ、勝手に部屋を出ることは出来なくなった。
『聞こえる?今からお前にはそこで体を鍛えてもらう。
 取りあえず最初は軽くランニングマシンにでも乗ってもらおうか』
いきなり体を鍛えろと言われ驚きはしたが、
少なくとも暴力を振るわれることはないらしいと安心した。
『いい、まずは簡単なことから始めてやるよ。
 私がいいって言うまで、ただ只管走ってればそれでいい。
 監視カメラで見張ってるからサボるなよ』
説明が終わると、小走りをする程度のスピードでランニングマシンが動き始めた。
命令通り、ただただ走り続ける。
(いったい、私に運動させて何の意味が・・・?)

素直に走っている間は何も言われないので、そんなことを考えながら走り続ける。
そして、少しずつこの調教の本性が現れ始める。
(な、なんかこの部屋、暑くなってない?)
初めは走っているから体が熱くなってきたと思っていたが、
明らかに部屋自体の温度が上がっていることに気付いた。
それは暖房と加湿器を合わせて使ったような、じめじめとした嫌らしい暑さだった。
『お、思ってたより辛い…。一体いつまで続くの?』
もともと運動はそれほど得意ではなかった上に、何の準備もなくいきなり
長距離走をさせられた挙句のこの暑さ。3キロも走ると疲れが見え始めた。
 
 

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